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本校では、3学期の取り組みに卒業レポート・卒論作成というものがあります。2013年度3年
生で陸上部の松家さんが卒業レポートで陸上部をテーマにしたので紹介します。
スポーツ健康学部スポーツ健康学科進学
松家はるな
はじめに
"陸上って走るだけでなにがたのしいのか。一人で辛くないのか。"
私が今まで、陸上をやってきて何度も聞かれたことがこれだ。しかし、これまで陸上に携わって
きてこれらの質問を聞かれるたびに思うことがあった。それは、陸上競技というのは、"陸上競 技をやっている人にしか分からない達成感があり、仲間とともに走ることによって得られるもの がたくさんあるスポーツであること。決してひとりだけの力では成すことのできないスポーツであ ること。"法政高校の陸上部として活動をしてきたこの2年半、顧問の先生、コーチ、仲間、ライ バルといった様々な人と出会い、ともに切磋琢磨しながら陸上に楽しみを感じていた。そんな 環境がわたしを"陸上は個人競技"という概念から"陸上部は団体競技"という概念に変えたの だった。一般的に陸上競技は個人競技と言われている。陸上部での様々な経験を振り返って 今回、この機会を利用して改めて考えてみたい。
第1章個人競技と団体競技
一般的に個人競技とは、「個人の間で勝敗を争う競技」、「個々の競技者が得点やスピードを
競い合う競技」などと言われている。その対義語はもちろん、団体競技である。団体競技は「団 体同士が対抗して行う競技」などと解釈されている。またほかの解釈としてこんなものがある。 スポーツにおいて、「アメリカ起源のものは団体競技、日本起源のものは個人競技である」とい う考えである。アメリカ起源の代表的なスポーツといえば、ベースボール、アメリカンフットボー ル、バスケットボールが挙げられ、ベースボールは1チーム9人、アメリカンフットボールは1チー ム11人、バスケットボールは1チーム5人の団体戦である。一方、日本起源の代表的なスポー ツといえば、柔道、相撲、剣道といずれも個人競技である。このような考えが世間一般的な解 釈なのである。しかし私は部活動においてはほかにも解釈の仕方があるのではないかと考え た。それは団体競技とは"チームワーク"を必要とする競技であり、"チーム"として取り組みを している競技であるということ。だから陸上部は一概にも個人競技であるとは言えないのであ る。
第2章 チームワーク
団体競技に必要だと考えるチームワークをわたしは、"集団に属しているメンバーが同じ目標
を達成するために行う行動。"つまり言い換えると、目標を達成するために集まった集団である と考えた。これは陸上部に当てはまると思う。わたしはこの法政高校の陸上部で様々な経験を してきた。たしかに陸上競技は一般的に個人競技と言われているくらいなので、練習や試合も 最終的には自分との闘いだと多くの人が考える。けれど、自分と闘うために死ぬ気で走り、自 分の限界まで挑戦をすること、練習で負荷をかけ続けることは一人ではできないと思う。部活 動でよく見かける、走っている選手に対して周りの選手が"ファイト!!"と声をかけ合うところ にもチームワークというものが存在する。キツイ練習でも、部員と共に辛さを味わい、部員全員 で励まし合い、切磋琢磨して部活を作り上げていく姿はまぎれもなく陸上部は団体競技である ことを示しているのだ。部活の合宿では、最後の一人が走っている雨の中、自分は走り終わっ て疲れているのにもかかわらず、最後には何人かの選手がその選手と並走してともにゴール をした後継を目の当たりにして、きっとそのようなさりげない行動ができるのは、部活が一つの 目標に向かっている"チーム"になっているからであり、またこの時わたしは強くチームを感じた のであった。なかでも駅伝は正真正銘の団体競技と言えるだろう。一つの襷を決して途切れさ せることなくつなげる。実際に駅伝を走ってみて、仲間をあれほど強く感じたことはほかにない のではないかというくらい仲間の存在は大きかった。辛い練習の時私の頭の中にはいつも、み んなで喜んでいる姿があった。決して一人で喜んでいる姿ではない。自分の一秒がチームの 一秒。この言葉をしつこいくらい自分の頭に叩き込んで辛い練習も仲間と共に乗り越えてき た。苦しいのはたった数分。その一瞬のために努力をし続けることができた背景には必ず仲 間の存在があった。仲間が待っている。仲間は次第に一つのチームとなってゆく。そんな駅伝 も歴とした団体競技なのだ。リレーにおいても同じことが言える。4人の選手全員が試合当日 に100%の力を出すことは難しい。それでも良い成績を残せるのはなぜかと考えたとき、そこ にはやはりチームワークという言葉があった。自分のミスがチームの0.1秒を大きく左右すると 考えるとマイナスにとらえがちだが、それは逆に自分の調子の良さがチームの0.1秒を大きく 左右すると言い換えることができる。仲間のために、チームのために自分の100%をだしてバ トンをつなぐリレーも団体競技であるのだ。
第3章 陸上の団体競技
陸上の試合では実際に走るのは自分であり、陸上は個人競技であるという意見が多い。わ
たしはそうとは思わない。ある文献によると、「個人競技のよいところは、個人が努力すれば、 その分だけ上を目指せることである。団体競技の球技では、いくら自分だけが努力しても、チ ーム全体が同じ気持ち(球技は個人競技の集合体)でしっかり取り組まなくては上にいけない のである。ただし、その「個人」という意味が「自分だけ」「わがまま」「人との関わりを避ける」な ど、マイナス面を出してくると、「スポーツを通して人間育成」という目的から離れてしまうの だ。」と書いてある。まさにその通りである。だからこそ、陸上部は「団体競技」でありたいの だ。個人での活躍の場が多いからこそ、まわりの力も必要となり、仲間意識をもちながら取り 組む。それが部活動における陸上競技なのだ。
第4章 まとめ
よいチームというのは、予想以上にチームの成績が伸びることがあったり、力を発揮する選手
の割合が多くなることがある。どの県にも強い選手が毎年いるが、よい取り組みをしている学 校は、毎年継続して強い選手が出てきている。それは、個人競技でなくチームになっているか らであると思う。大規模校、小規模校の違い(ハンデ)はあるが、陸上の大会では、団体総合 優勝にこだわる、リレー・駅伝にこだわる、「全員陸上」をいつも目指すことが大切だと思う。よ いチームは、一人ひとりが自己ベストにこだわり、一覧表に載る8位入賞にこだわり、0.01秒 の積み重ねにこだわり、しっかりした応援にこだわり、具体的な目標をもって大会に臨んでい る。そんなチームを作り上げるには、仲間の存在が必要不可欠となる。同じ目標をもってとも に成長し合える環境で陸上というものに熱中できたのも、やはり部員や顧問の先生、両親、応 援してくださる人々のおかげである。わたしはその人たち全員が一つのチームであるといって もいいと思っている。だから陸上部は団体競技なのだと思った。個人競技では味わえることの できないすばらしい経験をでき、決して自分ひとりでは出せない力を仲間がいることで、出すこ とができるといった仲間の存在を大きく感じることができるのは団体競技の良さである。またそ の、仲間の存在によって出せる力というのは団体競技が掛け算であることを示している。1人 でも0がいたら、チームは0となってしまう。しかし、たとえ一人ひとりの力が弱くてもチームとな れば掛け合わされ、大きな力を生み出すことができるのだ。これがチームで成り立つ団体競技 の魅力である。
おわりに
強いチームにこだわることはもちろん必要なことであるが、お互いを尊重し合い、良いチーム
を目指すことが陸上部という団体競技をさらに深く楽しめる秘訣だとわたしは思う。決して自分 は一人の力で走っているわけではないのだ。
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